丸元淑夫さんが亡くなった。
丸元淑夫氏死去(作家、料理研究家) 時事通信 私にとっては、10数年前に独立してからずっと料理の(片面的な)師匠だった方だ。
つい先日の日経新聞に、油の種類と使い分けについての記事が出ていたが、丸元氏の著書を読んでいた者にとっては「何を今さら…」というたぐいの内容だった。
私は、ケガはするが病気らしい病気をしたことがない。特に独立してからはそうだ。
それまでは専業主婦かつ栄養士だった母の食事をとっていれば健康でいられた。しかし、独立するとなると自分で作らざるをえない。毎日カップラーメンではまずかろうというのは、いくらアホな私でも容易に想像できた。
では何を食べるべばよいのか?それに関する体系的な知識はまったくなかった。
ネットもなかった当時にその答えを教えてくれるのは料理本だけだ。
しかし、綺麗な装丁で綺麗な料理を載せるお嬢様向け(?)の料理本は巷にたくさんあったが、働く人間の食事という観点、栄養学的な観点で書かれた実用的料理本は皆無と言ってよかった。
そういう中で、丸元さんの書かれた料理本は、まさに救いであった。氏の本を理解し、実践することにより、体系的かつ実践的な栄養学が身につけられたし、現在の丈夫な身体を維持することができている。実際、私は風邪ひとつひかないし、食べられないものもほとんど無い(グロ系以外はOK)。
日本においては、ダイエットのための<カロリー栄養学>が主流であって、栄養素を採ることが食事の意味であり、何の栄養素をどれだけ採るべきかを教えることが栄養学の存在価値であるという視点がなかなか普及しなかった。そんな状況に警鐘をならし、<正しい食事>を一般の家庭に対して丁寧に説明し続けた氏の功績はいくら賛美してもしすぎることはないであろう。
また、共働き家庭が増え、日に三食を正しく採れない状況になったならば、まずもってサプリメントを導入すべき、との考えも理にかなっていた。正しくサプリメントを採るためには、どの栄養が足りないかを知る必要があり、逆にどの料理にはどの栄養があるのかが理解されていなければならない。つまり、毎日料理を作れない家庭にこそ栄養学を勉強する必要があるのだ、ということをサプリメントを通して理解させてくれたといえるのだ。
身体のための料理、家族のための料理という考えが、氏の料理には貫かれていた。
一部、氏をカルト扱いする向きもあるようだ。
確かに、風邪はビタミンCの大量摂取で治るとか(これはノーベル化学賞学者のポーリング博士の説に従っていた)、あるいは、生魚のスープをおいしくないと感じたらそれは味覚が壊れていると断定するなど、トンデモ系の話も無くはない。
しかし、それらを含めても、日本における正しい栄養学普及の第一人者であったと考えるのが妥当だろう。氏がいなければ、一般社会の常識としての栄養学は、いつまでたっても<カロリー栄養学>から抜けられなかったのではないだろうか。その意味では、料理研究家というよりも、栄養の点で社会に警鐘を鳴らす<栄養ジャーナリスト>に近かったのではないかと思う。
氏は亡くなっても、その考え方の基本を身につけた弟子は(たとえ片面的であっても)日本中にたくさんいる思う。氏の撒いた種はちゃんと育っていると思いたい。
「心配しなくていいですよ」と申し上げたかった。
心より、ご冥福をお祈りする。
さて、しばらくは追悼の意を込めて、丸元レシピを思い出しつつ作ってみようと思う。
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